子育て研究所

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Lesson 5-2 自己受容

 我が子にこれが身についてさえいれば、決して道を踏み外すことはないと私が断言した、そのひとつめをご紹介しましょう。それは「自己受容」です。
 自己受容とは自分のことが好きだということです。自分を受け入れているということです。私はOKである(I'm OK !)ということです。念のために申し添えますが、自己満足とは違いますので、きちんと区別しておかなくてはなりません。(似ているところもあるけどね。)
 「ありのままの自分を認める」ということは、「欠点も含めての自分を肯定する」ということですが、決して努力しなくてもいいとか、向上心を否定したりするものでもありません。もちろん、自分の欠点を知らないよりも、知っている方がいいのです。しかし、その欠点を心でとがめる必要はありません。いくら精神的にとがめても何の徳にもならないし、むしろ精神健康上よくありません。
 例えば、算数が苦手な子どもがいたとします。その子が「自分は算数が苦手なんだ」といくら悩んでも、問題解決には結びつきません。冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、悩む暇があったら、計算問題の一問でも解いた方がよほど問題解決になるのではないでしょうか?  「今の自分は算数が苦手」ということは認識していても、算数ができるとかできないといったようなことで、自分の価値が揺らぐようなことはないといった自信を持ちつつ、算数の苦手が少しでも克服できるように努力するのが望ましい状態です。

 「私は自己受容は大丈夫です。人からも美人でスタイルも良いと言われるし、夫は一流企業の重役なので金銭的にも裕福です。この時計も先日ヨーロッパに旅行した時のものなんですよ。ホホホホ」と自信満々な人もいます。それは決して悪いことではありませんが、そういう人の自己受容の根源はすべて物質的なものであり、現象的なものなのです。そういったところにしか自分を誇れる基盤がないというのは、私に言わせれば、それは本当の自己受容ではないのです。私たちはつい、人を肩書き、収入、持ち物などで評価しますし、子供を成績やテストの点などで評価しがちです。そうではなくて、人は存在しているだけで素晴らしいもの、価値があるものという観点に立って、子育てをしていくと、自己受容のできる子どもに育っていきます。
 あなたのお子さんが産まれた時の事を憶えていますか? 私たち夫婦の子として、この世に産まれてきてくれただけで、ただそれだけで感謝で、それ以上何も必要ありませんでした。元気に産まれてきて欲しい、健やかに育って欲しいという願い、そして産まれてきてくれた子に対しての愛(いと)おしさ。
 最初にあなたの赤ちゃんを見たときに、「将来有名校に入学して、エリートコースを進んで欲しい」とか「算数で平均80点以上とって欲しい」とか思わなかったはずです。しかし、だんだんと欲求が高くなってきて、テストでいい点を取ってこないと満足できなかったり、学校に行かないと感謝できなかったりします。子供も人も、外面や現象的な面だけで判断せず、本質的な面を見れるようになることが理想だと思います。あなたのお子さんもそのようなまなざしで見つめてあげていただきたいと思います。「隣の子の方が成績がいいから、隣の子の方がウチの子よりも可愛い」というお母さんはいないと思います。本来、愛は無条件なものだと思います。

 あるご夫婦が私のところを訪ねて来ました。お子さんが不登校で悩んでいるとのことでした。ご両親の苦労も理解できましたし、その背後のお子さんの気持ちも伝わってきました。学校に行けないということで、お子さんは自分を責めているようでした。つまり、「学校に行けない」だから「自分はダメなんだ、価値がないんだ」と責めているのです。
 そのご両親は愛情溢れるご両親で、「息子に自信をつけてもらいたい。」と話しておられました。息子は野球が得意だから、部活でレギュラーになれれば自信を回復して、学校に行くようになるかもしれないと考えているようでした。実際に、学校に行かなくなり始めた頃でも、部活にだけは行っていたそうで、もう一度部活にだけでも行って欲しいと考えているとのことでした。
 あなただったら、どのようにアドバイスしてあげますか? そうですね。こういった場合、自己受容のことをお話してあげればいいと思います。親からありのままの自分を愛されて、無条件の愛情を受け、自分が好きになって、自分で自分を認めて、自分の心が満たされたとき、人にも関心を持つことができ、人を愛することができるのではないでしょうか。
 確かに、部活で自信を取り戻すことも必要かもしれません。しかし、他人と比べて得られる自信は本物の自信ではないと思うのです。それは簡単に揺らいでしまいます。そうではなく、あなたはこの地球上でたったひとつのかけがえのない生命であるというメッセージが伝わり、自分を尊敬する気持ちであるならば、そういう人が非行に走るでしょうか。前の課で「尊敬」についてお話しましたが、自分を尊敬することも重要ですね。もちろん、あなたも自己受容してくださいね。自分を認めてあげてください。

 では、どのように自己受容していけばよいか、また、子供を自己受容の状態にするには、どのように援助すればいいでしょうか。あなたのお子さんが自分のことが好きでいられるように援助し、あなたがそこに存在するだけで素晴らしいというメッセージを伝えるにはどうすれば良いでしょうか。いくつかの具体例を交えてお話しましょう。
 子供が小さいときには無条件のスキンシップなどが有効だと思います。無条件のというのは、褒美でないということです。テストで良い点を取った時などにそれをすると、テストで良い点を取る僕は良い子だけど、悪い点を取る僕は悪い子、というようになってしまいます。でも、中学生になるとなかなかスキンシップという訳にもいかないですね。そういった場合は子供の話をしっかりと聴いてあげるといいと思います。こちらができるだけ口をはさまず、相づちを打ちながら、ただただ話を聴いてみてはどうでしょうか。しばしば、親がしがちな「親子の会話」というのは、親ばかりがしゃべったり、しかもその内容が説教のようなものであったりするようです。まず、しっかり聴くこと。これが自己受容感にもつながると思います。
 また、お子さんの決定権を尊重してあげるというのも良いでしょう。一般に、親も教師も子供の決定権を認めたがらないことが多いようです。人生経験の長い大人から見れば、子供の判断はしばしば間違っていたり、もっと良いやり方があったりするわけですが、やはり最終的な決定はお子さんに委ねるべきだと思います。つまり、助言をするのはたいへん結構なのですが、その意見を押しつけると、自分に自信が持てなくなり、自分を好きになることができなくなります。それに、こうなっては対等な人間関係ではありません。

 余談ですが、私の子育ての話を聞いて、逆に落ち込む方がいます。「ああ、今までの子育ては間違っていたかもしれない」、「今までのクラス運営は間違っていた」と落ち込むのです。そんな時にも、自己受容です。過ぎ去った過去を悔やんでも仕方ありません。これからよりよい子育てができるかもしれないのです。完璧にできなくてもいいんです。このインターネット講座で、ほんの少しでも親子の関係が良くなれば、あなたと子供の笑顔が増えれば、とっても素敵なことなのです。自分を好きになりましょう。

 おまけ
 自己受容が大切だということがこのページを読んでわかったとしても、それがすぐに実現するわけではありませんよね。それがこのインターネット講義の弱点でもあります。このホームページの最終目的は、オフラインでの子育て援助なのです。お母さん方、お父さん方、先生方に集まっていただいて、一緒に自己受容感を高める手法なども実践していきたいと切に思っています。(自分が解放されて、気分爽快ですよ。)