子育て研究所

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Lesson 6-2 ほめることの意外な落とし穴

 あなたはどんな場面で、どんなほめ方をしていたでしょうか。叱ることに比べれば、基準は曖昧かもしれませんね。

 「叱るより、ほめて育てよ」とはよく言われることです。私もそれには賛成です....が、叱る時と同様に、効果と副作用を良く理解した上で、ほめるようにした方がいいと思います。「えっ、ほめることにも副作用があるの?」と驚かれる気持ちは分かりますが、ほめて子育てすることにも、叱る子育てほどではないにしろ、いくつかの落とし穴があると私は思います。では、ほめることの副作用とは何でしょうか? ほめることの効果は皆さんに考えていただいて、副作用だけについて、述べてみましょう。

(1)賞を目的に行動するようになる
 たとえば子供がテストでいい点をとってきたとしましょう。親がこの子をほめてあげたり、あるいは褒美として何か買ってあげたりすると、どんなことが起こるでしょう。子供は次のテストでも良い点をとろうと、頑張って勉強するようになるかもしれません。しかし、このとき子供は、勉強して知識を得ることが目的ではなく、賞をもらうことを目的に行動するようになっているのかもしれません。これでは、勉強することの必要性をいつまでたっても理解できませんし、勉強する楽しさに目覚めることもありません。

(2)賞をもらえないとわかると、適切な行動をしない
 子供が賞を目的に行動するようになると、賞をくれる人がいないとか、いても賞をくれないことがわかると、適切な行動をしない可能性があります。大人でも、利益にならないことは一切しないというポリシーを持った人がたまにいますね。そういう人は、他の人もまた、お金でしか動かないというような信念を持っているかもしれません。また、「ご褒美をくれたらするけど、ご褒美をくれないのならしない。」と、賞をかけひきの材料に使うようになるかもしれません。それでは、本当に心を育てることにはならないのです。

(3)はじめからあきらめてしまうかもしれない
 あるいは、結末が悪そうだと予測すると、「どうせご褒美はもらないんだから」と、はじめから投げ出して手をつけないかもしれません。

(4)結果ばかり重視するようになる
 結果がよければ賞がもらえるわけですから、子供は「結末さえよければいいんだ。」と思うようになり、安易な手段、あるいは反社会的な手段で、結果だけ手に入れようとするかもしれません。目標を達成するまでの努力の経過を楽しんだり、経過を重要視することがなくなるでしょう。そして、結果が全てですから、それが悪いと、全て無駄に感じて、自信を失ったりします。

(5)家庭や学校に競争原理を持ち込むことになる
 賞をもらえる人ともらえない人に分かれると、子供の間に縦(上下)の関係ができます。自分が上だと感じれば他の人を見下すようになり、自分が下だと感じれば卑下するようになります。そして、賞や褒美を与える親や教師はそのさらに上ということになります。競争を否定するわけではありませんが、無意味な競争は避けた方がいいかもしれません。

(6)他人の評価でしか自分を評価できず、必要以上に評価を得ようとする
 他人から認めてもらわないと(ほめてもらわないと)、自分の存在価値がわからず、自己受容に欠けた人間に育つかもしれません。自分の根源的な存在価値に目覚め、自己受容感が満たされないと、不安になり、ブランド品で着飾ったりすることなどでしか、自分の価値を確認できないようになるかもしれませんし、そういったことでしか、人を判断できない人間になるかもしれません。つまり、ほめられる、ほめられないで自分の価値が変動するといった、自分の中にはっきりとした価値基準がない人間になる恐れがあります。

(7)貢献感が失われやすい
 お駄賃を払って、家事を手伝ってもらうようにしていると、家族に対する所属感、貢献感が育ちにくくなくなるかもしれません。私も(僕も)この家で自分の仕事があり、居場所があるんだと感じることが重要です。それにお駄賃だと、年齢とともにもだんだんとエスカレートしますよ。

(8)賞がエスカレートしやすい
 小さい頃は、100円のお駄賃で充分だったのが、大きくなると、1000円でも満足しなくなります。

 と、ほめることのマイナス面を敢えて強調しましたが、決してほめることが悪いというつもりはありません。ここでは、妄信的な、ほめて育てよう教の信者の方に、少し考えてもらおうとして、あえてマイナス面だけ取り上げてみました。叱ることに比べれば、副作用は少ないと思いますが、ほめ方も学んだほうがいいという気持ちになってくだされば嬉しいです。
 ほめることの副作用の根源は何かと言われれば、「ほめることによって、子供を自分の思い通りに動かそう」とする大人の気持ちだと思います。大人どうしでも、「あの人は、おだてておけば、大丈夫よ。何でもしてくれるわ」というようなことがあると思います。それは、対等な関係でしょうか? 対等な関係、つまり、子供をひとりのかけがえのない人間として、尊敬し、信頼する気持ちが欠けているならば、子育てはうまくいきにくいと思います。逆に言えば、子供を見下さずに、ひとりの対等な人間として見つめる基盤ができているならば、ほめ言葉であっても、褒美を与えても、上に書いたような副作用はないと考えます。
 次のページでは、具体的な例を挙げて説明します。