子育て研究所

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Lesson 7-2 経験から学ぶ

 子供はナイフで怪我をすることによって、刃物は危ないということを知り、アイロンで熱い思いをすることによって、アイロンは熱いことを知ります。それに対して人はどうすることもできません。つまり、電源の入ったアイロンを熱い思いをせずにさわることはできないということを学びます。そういった経験を通して、人は刃物を尊重し、アイロンを尊重するのです。ボールが当たれば痛いし、自転車で転べば擦りむくという経験は、親がいくら注意深くその子に降りかかる火の粉を追い払おうとしても不可能なことです。(一生子離れしないつもりですか?) 自然の法則に立ち向かっても、自然はびくともしませんし、自然は相手が子供だろうと手加減はしないのです。お湯もナイフも手加減はしません。だから、学習した子供はお湯やナイフのようなものを、慎重に扱い、人間は自然の掟(おきて)を尊重するのです。

 ルールも同じです。目覚まし時計の例を覚えていますか? 起きなければ遅刻するし、先生に叱られたり、恥ずかしい思いをするのです。それがルールです。自然のルールとは少し違いますが、それは社会のルールです。社会のルールに対して、大人が楯になって守ってばかりでは、大人も苦労が耐えませんし、子供の成長も望めません。
 秩序、ルールを教える方法のひとつとして、以上のような方法(目覚まし時計の例のような方法)があるのです。その際、私は全く叱っていませんよね。つまり、別に叱らなくても、しつけはできるということです。

 経験を通して学ぶということに関連して、子供が危険なことをしそうになった時の対処法の例をお話しましょう。これはあくまでひとつの例ですから、実際に応用する時は慎重にお願いします。

 [ 事例 ]
 私が重度身体障害者施設に勤務していた頃の話です。指導員はアイロンを使って、作業をしています。てつお君は指導員が使っているアイロンに興味津々です。ちょっと触ってみたいのです。でもそのたびに、指導員から「熱いから触っちゃダメよ!」と言われて、触ることを許されません。
 ある時、周りに私とてつお君だけしかいない時がありました。その時も、てつお君はアイロンに触ろうとしました。私は、「てつお君、そのアイロンが熱いのは知ってる?」と優しく尋ねました。「うん」とうなずきながら、てつお君は注意されたと思って手を引っ込めました。しかし、しばらくするとやっぱり触ってみたくなったようで、アイロンに手を伸ばし始めました。私はアイロンの温度から考えて、触ってもちょっと熱い思いをするだけだからと判断し、そのままてつお君の行動を気づかれないように見守っていました。案の定、てつお君はアイロンに触り、「熱い!」と手を引っ込めました。それを見た私は、叱りもせず、「てつお君、熱かったの? 大丈夫?」と言いながら、氷をひとつ持ってきて、冷やしてあげました。それ以降は、てつお君はアイロンの金属部分は触ろうとはしなくなりました。

 さて、上記の例を考察してみましょう。いつも目を光らせて、てつお君の行動を止める指導員に対して、てつお君はどのように感じるでしょうか。皆さん、優しい指導員でしたが、おそらくこのように感じるのではないでしょうか。「先生は、いつも僕が興味を持ち、やろうとすることの邪魔をする」と。
 ところが、私に対してはどのように感じるかというと、「邪魔をする」とは感じません。だって、邪魔をしていませんから。そして、熱かった時に、冷やしてくれた優しい先生と思ってくれるでしょう。また、私に対して、「やっぱり、この先生の言う通りだ、この先生の言うことには従った方がいい」と感じてくれたに違いありません。さらに、アイロンの危険性まで学んだのですから....。一石何鳥でしょうか。
 毎回、アイロンを遠ざける苦労と比べ、どちらが楽で、どちらが子供の力を育てているか、どちらが子供との関係が良くなるか、子供をひとりの人間として扱っているかを比較してみてください。こういった方針で育児をする仲間と一緒に、様々な事例を聞いていくうちに、あなたも自然と今までの子育てのレベルよりも、数ランク上の子育てができるようになってきます。このホームページを通じで、そういった高め合う仲間が増えれば素敵なことだと思います。そして、そういった場を提供していきたいと考えています。