子育て研究所

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Lesson 7-5 親と子、教師と子供の協力

 あなたの友達が、自分で稼いだ給料で、あなたから見ると無駄にしか思えないものを買おうとしているとします。あなたはどのように声をかけますか? 「○○さん、その商品って、聞くところによると、あまり良くないらしいわよ。やめておいた方がいいんじゃない?」というように声をかけるのではないでしょうか。そして、それでもその友達が買うといえば、それはもうその友達の問題であり、その友達に決定権があることなので、それ以上は何もいうことはできませんよね。それが本当の対等な関係です。
 つまり、あなたのお子さんにも同様の対応をしていただきたいのです。ひとりの決定権のある存在として尊敬し、その決定権を尊重して欲しいのです。もちろん、親として親身にアドバイスをしてあげることはとても重要なことです。しかし、最終的な決定権は子供本人にあるのです。人間は誰しも、自分の人生を自分で決定する権利があります。そうではないですか? 自分の人生を決定する権利があるのに、お小遣いの使い道を選ぶ権利がないということはあり得ませんね。
 「そんなことをしてたら、子供の思い通り、きっと好き勝手にするわ!」と食ってかかられることがあります。実際に比べてみていただいたらわかると思いますが、子供の決定権を日頃から尊重していると、子供は親の忠告を素直に聞いてくれるものです。最後には私が決めるんだ、私が決めなければならないんだと思うので、真剣に忠告に耳を傾けるのです。でも、いつもガミガミやって、子供の決定権を侵害していたら、子供は聞く耳を持とうとしません。「うちの子は、親の言うことを全然聞かないんだから」と言う親は、たいてい、子供の言うことも聞いていないのです。

 老婆心ながら申し添えますが、子供の決定権を尊重して、子供が失敗したときはどうしますか? 子供の失敗の尻拭いをするという人はいませんか? それは、この講座の答えとしては不正解です。では、子供の問題だから、放っておけばいいという人もいます。比較すれば、その方が少しマシだと思いますが、それも親と子、教師と生徒の関係としては寂しいかもしれません。
 「困っているように見えるけど、何か手伝おうか?」という感じの問いかけが良いのではないでしょうか。実際に、友達が悩んでいたらそうするんじゃないですか? 子供も同じですよ。もちろん、そこで、「ママ、大丈夫よ」と言われれば、子供の権利を尊重し、見守ってあげてください。「手伝って」と言われれば、そこで始めて手伝ってあげればいいでしょう。それが子供を対等なひとりの人間として尊敬するということです。
 こういう子育てが定着すると、子供の方から、「手伝って欲しい」とか「今はまだ大丈夫だから」というようなことを表現してきます。もちろん、そういった子育ての中から、「親は私の味方だ」という認識を強くします。そうでなければ、「親は私のやりたいことに反対ばかりする」と思われ、だんだんと親に話をしなくなったり、むやみに反抗するようになります。
 また、そういった対等の関係の中で、「私に決定権があると同様に、私がママに助けてと頼んだ時に、私を助けるかどうかの決定権はママにある」ということも認識するようになります。もちろん、対等の関係というのは、そこで、「ノー」といって断ることもでるのです。でも、子育てですし、親子ですから、できるだけOKしてあげてください。そうすると、子供は「ママは断る権利があるのに、助けてくれた、本当にありがとう」という気持ちになります。同時に、他人からそうされた時にも感謝の念が出てくるようになるはずです。お互いに、尊敬しあい、信頼しあうという関係、ひとりの人間として認め合うという、私が理想としている関係ができあがるのです。そうでないと、親に対しても、他人に対しても、助けてくれても当たり前と思われても仕方ありません。
 子供の意思を尊重するような対応の積み重ねをしていると、「センコーなんかに相談しても、無駄だよ」とか「ママに相談しても、無駄よ」というようには、決して言われなくなります。相談したくないのは、「相談したらきっと親は、ああしろ、こうしろというに決まっている」と思うからです。日頃からそのような態度で接していて、「どうして相談しなかったの」と言っても遅いのです。対等な関係の親なら、相談でも、子供は安心して弱いところも見せられるのです。

 もしかしたら、こうした手続きを踏む子育ては、親子なのに他人行儀だというような印象を与えているのかもしれませんが、実際にやってみてください。決してそうではないと思います。それに、これからの国際社会において、そのぐらいの方がいいと私は思います。違う価値観の人間と上手に付き合っていく秘訣ですので、その技術を子育てだけに終わらせないでいただきたいと思います。夫婦間でも意識して、練習してください。練習すれば、それが自然になってきます。自転車に乗れるまでは、ハンドルがぎこちないのと同じです。
 前のページとこのページはセットになっていると申し上げました。親と子、教師と生徒は協力する関係が理想ですね。逆説的に聞こえるかもしれませんが、前ページで学んだ、誰の問題かをハッキリさせるという練習をつむことによって、よりよい協力ができるようになるのです。ここがポイントですので、繰り返しましょう。前のページで、「これは子供が解決すべき問題なのか大人の課題かをはっきりさせましょう」と言ったのは、「それはあなたの問題でしょ。だからママには関係ないわ」と言うためではなく、よりスムーズに、協力という関係を築くために説明したのです。お互いに理想的な協力関係を築いていくのに、どうしてもそのステップが必要だと思うから説明したのです。難しいですが、おわかりいただけたでしょうか。日本人は、お互いの領域に勝手に入って世話を焼くことが、互いに親密な関係だと思っているようですが、そうではないと思います。