子育て研究所

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Lesson 8-5 事例 わがままな子に対して

 [ 事例 ]
 以下の話は、私が子育て教室に参加したときに、その教室の先生から聴いた話です。その先生は個人で体操教室をされている活発な女性です。

 ひとし君はドッチボールでボールに当たるのが大嫌いです。ひとし君はいつも、「俺には当てるな! 絶対当てるな!」と大声を出しながら、逃げまわります。ひとし君に当てると、駄々をこねるのを知っている子供たちは、ひとし君に当てないように遊んでいました。しかし、今日は最後までひとし君が残ってしまいました。ひとし君はいつものように、「俺には当てるな!」と叫びながら逃げまわりますが、最後のひとりだから仕方ありません。みんながひとし君をめがけて、ボールを投げます。とうとう、ひとし君にボールが当たってしまいました。ひとし君のチームの負けです。でも、ひとし君は「当てるなと言ったのに!」と怒りだし、陣地に寝転んで手足をばたつかせ、その場から動こうとしません。とうとう、子どもたちはひとし君の手足を4人で持って、運び出そうとしました。それでもひとし君が手足をばたつかせたため、ひとし君を運んでいた子供の中には蹴られて痛い思いをした人もいました。

 あなたなら、どう対処しますか? その先生も子育て教室の生徒に「あなたなら、どう対処しますか?」と尋ねました。その先生が、その時された実践例は次のようでした。
 みんなを集めて、それぞれの言い分を聞いたそうです。そして、ひとし君に言いたいことはないかと、ある子供に尋ねたそうです。そうすると、その子は、「ルールを守って遊んで欲しいです」と答えたそうです。それを聞いた先生は、「本当にそう思っとるん? そうじゃないじゃろう。じゃあ、先生が代わりにゆうちゃる。(岡山弁)」と言った後、大きく息を吸い込んで、ひとし君に向かって、「おめえなぁ。みんながこんなに迷惑に思いながらも、一緒に遊んじゃろんのがわからんのか! ひとりだけ勝手なことせずに、ルールを守れ!」と叫んだとのことです。まあ、この先生は熱血が売りですので、それでいいと思います。その先生の話では、それからひとし君はルールを守るようになったとのことです。
 さて、この場合、私だったらどのように対処するかを考えてみました。私にはその先生のように感情をぶつけて子供の心をゆさぶるということは出来そうもありませんし、その副作用も知っているので、私なら別のやり方を選びます。事例も回を重ねましたので、復習を兼ねて、説明を入れながら説明していきたいと思います。

 この場合、私(その場にいた先生の立場であったと仮定しての私)は当事者ではないので、子供たちから、「先生、なんとかしてよ。」と依頼を受けない限り、勝手に(許可なしに)口を挟まない方が良いでしょう。それは前にもお話したように、本来は子供が自分たちで解決する問題だからです。しかし、教育上口を挟んだ方がいいと考えれば、「先生も参加していい?」と、ひとこと当事者である子供たちの許可を得てから、参加することはOKです。このステップは必要なことです。この場合には、子供だけでは解決が難しそうなので、援助してあげるのが良いでしょう。

 さて、現場での対処法です。
 「先生、ひとし君がまたわがままを言ってるよ! なんとかして。」
 「具体的にいうとどうして欲しいの?」 (一応、子供の意見を求てみます。大人が勝手に解決法を提示しない方がいいでしょう。)
 「ひとし君を叱かって欲しいの」
 「ひとし君を叱ると、この問題が解決できるの? 先生はそうは思わないけど」 (叱るのは問題解決になりませんね。)
 「....」、子供たちは困ってしまいました。
 「それより、どうしたらみんなで楽しく遊ぶことができるかを一緒に考えてみない?」 (これが解決すべき問題です。)
 多くの場合、子どもたちは教師がひとし君を叱ったり、罰することを期待するかもしれません。そうすることは、あなたたちは良い子、ひとし君は悪い子というレッテルを貼ることになり、先生にほめられたいという気持ちを助長するので、それには触れません。さらに、叱るといった方法では、問題の解決にならないということに気づかせ、建設的な意見を求めます。
 「みんなはひとし君にどうして欲しいのかな?」と続けます。
 「(怒りながら)ひとし! ルールを守れ! わがままばかり言うな!」と子供が言うと、
 「ねえ、怒らずに言い直してくれないかな?」と、私なら促すでしょう。
 叱ったり、怒ったり、怒鳴ったりすれば、相手をコントロールできるという考えを改めてもらい、理性的に物事を解決していく方法を提案します。(これは何度も説明しましたね。)
 「ひとし君。ルールを守ってください」と言い直します。
 「ありがとうね。君の言いたいことはよくわかりました。ひとし君はどうですか?」
 「嫌だ! ボールに当たりたくない。当てられても外には出ない!」とひとし君。
 「そうですか。ひとし君とみんなではルールが違うんじゃなかなか一緒に遊べませんね。....じゃあ、こうしたらどうでしょう。みんなもひとし君みたいに、ボールに当てられても外に出ないようにするというのは....。それから、当てられたくないときには『当てるな!』と叫びながら遊んだらいいんじゃない?」と提案してみます。(自分だけ特別だということはありえないということは学習済みですね。)
 「そんなのおもしろくない。」とひとし君。
 どうもひとし君は自分だけが特別がいいんでしょうね。ここで、上記のルールで実際に遊んでみて、それでは楽しくないことを実際に体験してみるのも有効で、おもしろいかと思います。できれば、そうしたらいいでしょう。子供は体験から学ぶんでしたね。それで面白くないことがわかれば、なぜ遊びのルールがあるかが子供たちにもわかると思います。遊びにルールがあるのは、その遊びを面白くするためなんですね。

 「じゃあ、ひとし君は自分だけボールに当たらないルールで遊びたいのね? じゃあ、ひとし君を無視して、ひとし君は狙わずに、ひとし君だけ残った時点でひとし君チームの負けにしたらどうかな? みんなはどう?」と言って、ゲームを始めてしまえばいいのです。
 このルールでゲームをしても、ひとし君は全く楽しくないのです。「当てるな!」と叫んで逃げ回っていても、本当に狙われもしなかったら、楽しくないはずです。しかし、あたかもひとし君が参加していないようにプレーするので、他のみんなは楽しいとは思います。このように、ゲームはルールを守ってやらないと楽しくないことを、ひとし君に実際に体験してもらうとよいでしょう。
 これで、ひとし君はルールを自分にも適用してもらった方が楽しいということを学ぶと思いますが、いかがでしょうか。

 ちょっと、解説を入れすぎて、逆に読みにくい文章になりましたが、おわかりいただけたでしょうか。また、こういった場合は、ひとし君に対しての、根源療法的なアプローチについても並行して行うべきでしょう。子供の問題行動に対しては、ほとんどの場合、緊急の外科治療にあたる対症療法的な対処と、根本的に健康のバランスを取り戻す東洋医学的(漢方治療的)な根源療法的な対処法を併用すべきであるということだけ、覚えておいてください。親も教師も、その場の行動だけを治して、問題を解決した気になっている人が多いようです。例えば、子供が「ごめんなさい」ときちんと言えたら、それで問題が解決したように考える親は意外と多いのです。それだと、「ごめんなさい」を言えば、何をしてもいいというように考えるようになっても不思議ではありません。


 ひとし君は「負けず嫌いで、自分が一番にならないと気がすまない」のでしょうか。それとも、「他人を自分の思い通りに動かしたい」と思っているのでしょうか。はたまた、「駄々をこねる」ことで自分の居場所を確認しているのでしょうか。子供に限らず、人が困った行動をする時には、上記のようないくつかの心理的なパターンがあるのですが、それについては、また後で述べることにします。学ぶことはまだまだありますね。

 私は以上のような、代替案を示してみましたがいかがでしょうか。子供と全く衝突していないことに注目してください。そして、それがいけないということを叱られて学ぶのではなく、自らの体験から学ぶのです。私が提案する子育ては、親がイライラしたり、我慢したりする必要がありません。子供のいたずらを見守る子育てを説く教育の専門家の方もいますが、その方法は親がイライラを我慢しなければならないという場面もあるのではないかと思います。もちろん、どちらにもメリット、デメリットがありますから、そういった方法を批判するつもりはありません。読者のご判断にお任せいたします。