子育て研究所

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Lesson 2-3 どんな場面で叱りますか?

 さて、そもそも何故、子供を叱らなければならないのでしょうか。公共広告機構のテレビCMで、「子供から逃げるな、よその子も叱ろう」というのがあります。裏を返せば、最近の大人は子供を叱らないということであり、「だから子供がわがままになるのだ」ということなのでしょう。
 ここで、私の考えを述べますが、私は基本的には叱らない派です。それは叱らず、甘やかせればいいということではありません。多くの人が「ここは叱る場面だ」と思う状況でも、私から見れば、叱るよりももっとマシな方法があると感じているので、叱る方法に対しては否定的なのです。それは決して叱ることを否定しているのではないと理解してください。
 ちょっとややこしい説明になりましたので、喩えてみましょう。ある病気に効く薬Aがあります。その薬Aは一般に広く使用されているのですが、意外と副作用が大きいのです。また、薬Bがあります。その薬Bも薬Aと同じ病気に効果があるのですが、薬Aに比べて副作用がはるかに少なく、効果も高いのです。しかし、まだ新しいものなので、広く知られていないし、正しく扱うのには多少の技術が必要なのです。
 さて、叱責という方法は上の例の薬Aにあたります。今まで、子供の諸問題を解決するには「叱る」しかないと思われていたのです。しかし、ここでわたしは皆さんに薬Bをお伝えしたいと思います。しかし、薬Bは使用法が難しいのです。(本当は難しいのではなく、あまりにも「叱る」に慣れているので、慣れるまでは意識しなければ転換しにくいというだけのことなのですが。) そのつもりで、お付き合いいただければ幸いです。
 蛇足ですが、意見として「あなたは体罰賛成派ですか、それとも反対派ですか?」と尋ねられることがあります。そういった時に私はこう答えます。「私は体罰しない派ですが、反対派ではありません」と。人それぞれ考えがあって、体罰をする人もいるかと思いますが、それをとやかく言うことはできません。ただ、私がこのサイトで述べているようなことも知った上で、判断していただければと思っています。

 さて、「叱る」代わりにどうすればいいかを考えるために、皆さんがどういった場面で叱っているかを分析してみましょう。
 ( 1) 子供がグズグズしている時
 「早くしなさい」はほとんどのお母さんにとって、お子さんに対して最も多く口にする言葉ではないでしょうか。お母さんにお尋ねしますが、「早くしなさい」を連発して、本当に早くなりますか? その場しのぎ的な効果しかないのではないでしょうか。どうせ、あまり効果が無いのなら、イライラして「早く!早く!」は言わない方がお互いにとって得です。目覚まし時計の例にも関係するかと思いますが、「早く」の言葉よりも、具体的に早くする方法をアドバイスしてあげる方がいいですね。例えば、靴を履くのにグズグズしていたら、「早くしなさい」ではなくて、「座って履いた方が早く履けるよ」といった具合にです。

 ( 2) 悪いことをした時
 これはまた後でページを割いて詳しく説明する予定ですが、簡単に説明しておきましょう。まず、それが悪いことだと知らない場合があります。その場合は、叱らなくても、理由を説明するだけで大丈夫ですね。興奮する必要はありません。以前にこういうことがありました。数人の子供たちと公園に遊びに行った時のことです。子供のひとりが水道の蛇口をひねろうとしたところ、近くにいたおじさんにいきなり叱られました。その蛇口は壊れていて、触ると水が漏れるということでした。
 そういった場合は、ただ単にそのことを知らなかっただけですから、冷静に子供に説明してあげればいいだけのことです。こういった極端な例は少ないかもしれませんが、冷静に伝えればよい場面であっても、興奮して叱責口調で言っている場面はよく見られます。また、悪いことと知ってやっている場合がありますが、その場合の対処法も別の課で詳しく述べます。

 ( 3) 他人に迷惑をかけた時
 他人に対して、申し訳ない思いから、つい子供を叱ってしまうのかもしれません。そういった時こそ、責任の取り方を教えるチャンスです。対処法は次の失敗した時にも関係してきますので、そちらで説明します。

 ( 4) 失敗した時
 子供に限らず、大人であっても、失敗したときは、責任を取るというのが当然のことでしょう。では、責任を取るということはどういうことでしょうか。日本人は「責任を取るということ=職を辞すること」のように勘違いしている節があります。職を辞することは本当に責任を取ることなのでしょうか。
 子供が失敗した時も、あなたが失敗した時も、次の3点を考えてみてはいかがでしょうか。
 1.できる限りの原状回復に努力する。 (壊したら直そうとする、弁償する、散らかしたら片付けようとするなど)
 2.失敗の再発を防止する手段を講じる。 (具体的な対策が無い場合、心がけるだけでもよい。)
 3.その失敗によって傷ついた人がいるならば、心を込めて謝る
 つまり、失敗に対して叱る必要はありません。言葉で冷静に対処できるはずです。ちなみに、職を辞するという解決手段は、2の中のほんの一例に過ぎません。失敗を叱ることよりも、失敗から学べるように援助することの方が重要だと思います。失敗を叱られると、失敗した原因を分析しようともしませんし、失敗して叱られるぐらいなら、最初から挑戦せずにおこうと考える消極的な人間になるかもしれません。子供には(もちろん大人にも)失敗する権利があるのです。失敗しない人間を育てようとするのは、不可能ですから、そういった不可能な目標は立てるだけ無駄ですし、それに向かって努力することも無駄かもしれません。しかし、失敗を乗り越える力をつけさせることは可能ですから、子育ての目標をそちらに変えた方がいいと思います。成功者のエピソードで必ずと言っていいほど出てくるのは、何度失敗しても諦めなかったというエピソードです。例えば、エジソンは電球を発明するまでに、10000回の失敗を重ねたと言われます。そういったエピソードは山ほどあるのです。

 ( 5) 言うことをきかない時
 このケースが最も多いかもしれませんね。後で詳しく述べますが、言うことをきかない時に、叱ったり、叩いたりしていると、知らず知らずのうちに、子供は自分の思い通りにならない時には、叱ったり、叩いたりすればいいと経験から学習してしまいます。いくらあなたが口では良いこと、正しいことを言ったとしても、それが伝わることは避けられないのです。そのような経験の積み重ねから、友達が言うことをきかない時に、叩いたり、脅したりして、自分に従わせようとする子供になることは多いように思います。「子供は親の言う通りには育たない、やる(行動する)通りに育つ」ということです。「弟を叩いちゃだめでしょう!」と言って、お兄ちゃんを叩いて、お兄ちゃんは何を学ぶでしょうか? 副作用が大きいですね。注意しましょう。

 ( 6) わがままを言う時
 わがままを言う時も叱る必要はありません。断固として、「ダメです」と拒否するだけでOKです。親の毅然とした態度で、厳しさを教えることができます。叱らなくてもいいんですよ。

 ( 7) 危険なことをした時
 この場合は叱ることも有効かと思います。ただ、別のやり方もあります。

 さらに、叱ることについての考察をしましょう。難しい話が続いて恐縮ですが、辛抱願います。
 先ほど、叱ることを薬に喩えました。「叱る」という行為が子育ての薬のようなものだとしたら、処方する前に、きちんと「効果」と「副作用」も認識しておくべきだと思います。多くの人はその副作用を知らずに常用しています。あなたもその「薬」をこれからも使いつづけるのなら、その作用と副作用をはっきりさせてから使いたいと思いませんか? それをはっきりさせれば、乱用も避けられるし、どのような影響が予想されるかを知って対処できるようになるかもしれません。
 さて、問題です。「叱る」という教育方法の「効果」と「副作用」を挙げてください。この問題もすぐ解答を見ずに、じっくりと考えてください。