子育て研究所

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Lesson 2-4 叱る方法の効果と副作用

 さて、あなたはどちらの方が多く見つかりましたか? では、参考までに私の挙げたものをご覧いただきましょう。

 「叱る」教育方法の効果
(1) 即効性がある
 緊急の場合に有効です。

(2) 望ましくない「行動」に対して、有効に作用する
 「行動」と書いたことに意味があります。その意味は後ほど解説しますが、行動には作用するが、心には作用しないということです。

(3) 真剣さ、重大さが伝わる
 あなたが真剣に心配しているということ(愛情?)が伝わる場合があります。しかし、いつも叱ってばかりですと、その効果も期待できません。重大な危険に関しては、これは絶対にしてはいけないということが伝わって、有効かもしれません。


 「叱る」教育方法の副作用
(1) 罰する人がいなければ、不適切な行動をする
 親や教師など、罰する人がいる時には不適切な行動をしない子供でも、罰する人がいないと不適切な行動をするかもしれません。叱って子供を育てていると、子供は、「そのことが正しいことか正しくないことか」という判断基準ではなく、「叱られるか叱れないか」ということだけで善悪を判断しています。つまり、自分の内側に善悪の基準をもたなくなり、誘惑に負けず、正しいことを行なう力も養われなくなります。つまり、行動には作用するが、心には作用しないということです。あなたがいつも目を光らせていなければならない子供を育てたいですか? それとも、あなたが目を光らせていなくても、自分の良心に従って行動する子供を育てたいですか? 前者はこのサイトが目指す、ストレスの無い子育てに反しますね。

(2) 関係が悪くなる
 親が子供を罰するのは「子供のためを思っているからだ」、「子供を愛しているからだ」と、親の方は考えているかもしれません。しかし、子供の側から見ると「親は私のことを嫌いなんだ」と感じてしまうかもしれません。日常、叱ることが多いと、子供はそのように考え、親子関係は悪化してしまいます。叱ってばかりいると、相談するとまた叱られるんじゃないかと、困ったときにも親に相談できないようになります。そして、人間自体が嫌いになるかもしれません。

(3) 「人を支配するには、叱ったり、罰したりすればいい」と学んでしまう
 「このようにするのは、お母さんは良くないと思うんだけど....。」と冷静に言えばすむことを、頭ごなしに叱るということは、「あなたは冷静に言葉で言っただけでは分からない人です」というメッセージになります。さらに、意識するしないにかかわらず、「他人に自分の意見を通すにはそのような感情を使えばいいんだ、怖がらせればいいんだ」と学習してしまいます。冷静に意見を主張できる人間になってもらいたいですね。

(4) 叱ることは、親からの注目になり、いたずらで気を引こうとしている子供の行動をやめさせることはできない。
 しばしば子供は親や教師からの注目を得たいがために、いたずらなどをすることが少なくありません。そういった子供を叱ると、一時的には不適切な行動はなくなるかもしれません。しかし、しばらくすると同じ不適切な行動を繰り返します。それは、罰がマイナスの注目になってしまっているからです。このような子供は、「無関心でいられるよりは、叱られてでも、親の注目に注目されたい」と考えているのです。そして、そういう場合のそういう行動は、親の注目を引くのに効果的だと、無意識的に学んでしまいます。時々、「叱った後に抱きしめてやればいいのよ」と助言をする方がいますが、私は疑問に思っています。子供が親の注目を得たいという潜在的な気持ちからその行為をしている場合、逆に子供のそういった行動を助長することになると思いませんか? 抱きしめるのならば、何でもないときに抱きしめてください。良いことをした時に抱きしめるのも問題があります。その理由はまた別のページで解説したいと思います。

(5) 叱られまいと子供が消極的になる
 罰によって子供は不適切な行動を永続的にやめるようになることもあります。しかし、罰によってだけでは適切な行動を学ぶことができません。そして、「失敗を恐れず挑戦してみよう!」という意欲を持たず、「失敗して叱られたら損だからやめておこう」と消極的になってしまいます。罰で育てた子供は、不適切な行動もしないかわりに、適切な行動もしないという、消極的で意欲を失った、やる気のない子供になってしまう危険性があります。

(6) 親子関係が縦の関係になり、民主主義を学べない
 罰を与える人と与えられる人というのは縦の関係であり、上下の関係です。例えば、「宿題を忘れたので、グランド3周!」と教師が言うのは、教師側に決定権があって、民主主義的な手続きを経ているわけではありません。(もちろん、クラスのきまりであらかじめそのように決まっているのなら別ですが。)それは正しい民主主義を教えていることになりません。上に立つ人だけが決定権を持つなら、子供たちは社会や組織や部下に貢献するために上に立とうとするのではなく、自分のわがままを通用させたいから、人の上に立とうと間違った目標を持つようになります。これに関連する対等な関係、横の関係というのは次の課でお話します。
 縦の関係、横の関係という点から考えますと、いきなり叱るというのは縦の関係のようです。例えば、立ち入り禁止の場所に入っている人を発見したとします。あなたはどのように声をかけるでしょうか。その人が大人の場合、いきなり「コラッ!」と叱りますか? 「あっ、そこ立ち入り禁止ですよ。出てください」といった感じではないでしょうか。しかし、相手が子供の場合、多くの人がいきなり「コラッ!」とやってしまうのです。なぜでしょう。それは子供を心の底で見下しているからです。「子供だから、優しい口調で言っても言うことを聞くはずがない」と相手を信頼していないか、「子供だから、優しい口調で言わなくてもいい」と見下しているのです。子供にはそういったメッセージは伝わります。「叱ること」は、即ち、「あなたは優しい口調で言うと言うことを聞かない人です」というメッセージになっているのです。では、お聞きしましょう。自分の心に問いかけてみてください。立ち入り禁止場所に入って行く人が、スーツを着た身なりのいい男性だった場合と、ヨレヨレの服のみすぼらしい格好の男性だった場合、声のかけ方が違いますか? 後者の男性に声をかける時の方が、批判的な口調になりやすいと思いませんか? 子供に対して、いきなり叱るというのは、子供を私たちと全く同じ価値を持つ、ひとりの人間として扱っていないのではないでしょうか。

 公共広告機構で「よその子も叱ろう」というようなCMがありましたが、私はどうかと思います。決して叱るなというわけではありません。まず、理由を聞いてみるとか、注意をするといったステップの方が先だと思います。叱るのはその後でも遅くないと思いませんか?

副作用はそれだけではありません。副作用は叱られる側にだけでなく、叱る側にも及びます。
(7) 叱らずに人を従わせる人徳やリーダーシップが養われない
 叱って人を従わせることは安易な方法で、特に技術を必要としません。そのため、それが癖になり、常にその方法に頼るようになります。
 しかし、それでいいのでしょうか。叱らずに人を導くことは困難です。人徳があれば人は従います。リーダーシップがあれば人は従います。信頼されれば人は従います。本来はそのような人間的魅力で人が自然と従うようになるのが理想です。叱ることに慣れてしまえば、人間的な魅力を磨くことが疎かになります。教師がそうならば致命的です。いつまでも、自分を磨くことなく、人間的な成長が止まってしまいます。子供が従うのは「怖いから従っている」か「怒らせると面倒くさいから従っている」のです。
 あなたが会社の上司であっても同様です。私の言うことに納得しない人でも、期限を決めてでいいですから、叱らないと心に決めて人を指導してみてください。どうすれば自分の言葉に説得力が生まれるか、どうすれば自分を慕ってくれて自然と人が従うようになるかを意識するようになる思います。そして、人が自分の言うことに従ってくれることに対して、感謝の気持ちが生まれてきます。それが人間を磨くということなのです。


 どうでしょうか。この他にもメリットやデメリットが見つかりましたか? 解説が難しいと感じたところもあったかと思います。しかし、ご心配なく、全部を通して学んだ後に、もう一度振り返って読んでいただくと、ああ、こういう意味だったのかと納得できると思います。映画でも、最初に見たときには気がつかなかったところも、後で2度、3度と見なおすうちに、この場面が伏線だったんだなぁと感じることがしばしばありますよね。それと同じで、できれば2度、3度と通してご覧になることをお薦めします。